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【メイキングインタビュー第五弾 -会場編-】

会場展示の設計に携わった会場班、映像展示を担当した映像班、感染症対策を担当した対策班にインタビューしました。
会場展示ができるまでを振り返ります。

コロナ禍の中で開催された今年の卒業制作展では、会場における感染症対策の確立が必須でした。今回は会場展示を全般的にオーガナイズした会場班、そして、映像展示をオーガナイズした映像班、準備段階から感染症対策を検討・実践した対策班にお話を伺いたいと思います。

「対策班は、今年はじめて設置された部署でした。前年度までのノウハウの蓄積がなかったため、コロナウイルスについて徹底的に調べるところから始まりました。しかし、対策に関しては、社会全体がどのような方法をとるのが確実なのか探り探りやっている状態だったので、不安はありました。 今年はじめて必要となったことをいくつか挙げると、感染防止マニュアルの制作、消毒液の設置や検温の実施、キープ・ディスタンスの徹底、完全入場予約制と、会場換気の時間を挟む完全入れ替え制の実施などがあります。」

今年は完全予約制と入れ替え制を実施することで、入場者数を制限しましたね。

「人数制限を行うことは会場側との約束もあって、当初からの確定事項でした。その上で、人数制限について、チケットの予約について、時間制限の徹底などについてそれぞれどのような方法をとるのがベストかを話し合っていました。
話し合いの過程では、どのくらいの範囲でやれば運用できるのかパターンを挙げ、最悪の展開を予想しながらいくつか選択肢を設けていました。今は国が定めた方針が公開されていますが、卒制展の準備がはじまった頃は必ずしもそうではありませんでした。実際に開催されている他のイベントや展覧会の対策を参考にしつつ、手探りで進めていったという感じです。
わたしも含め、委員全体として、できる限りたくさんのひとに来場してほしい、という希望はありましたが、それは感染対策の方針と、必ずしも一致するものではありませんでした。そもそも、今年は開催すること自体がひとつの挑戦だった、と言えると思います。
例年と異なり、今年はアニメーションを見る時間が制限されてしまったり、換気の時間を設ける必要があったり……本当だったらこうしたい、というところを相当我慢した運営になりました。展示として一番ベストな状態、とはいかないにせよ、その中で最大限可能な範囲を模索していました。」

「感染対策を実施したのは、会場展示だけではありません。準備段階の対面会議などにおいても、キープ・ディスタンスの呼びかけや、参加者の把握を行いました。最初は厳しすぎるんじゃない?という反応もありましたが、参加者の中で集団感染が起きることは絶対に避けたかった。その点は甘くしてはいけないと考えていました。不自由な思いをさせてしまったなと思いますが、現時点まで1人も感染者が出ていないので、安堵しています。念のため、開催してから1ヶ月半は、来場者で発症したケースがなかったかの確認を行っているので、まだ完全に終わったわけではないんですが。」

会場展示のレイアウトも、今年は感染症対策を強く意識していましたよね。

「『ひらけた会場設定』というのが今年のテーマでした。『ひらけた』というのは、第一には感染症対策の観点から、第二には、内輪にならない展示の実現、という観点から導き出されたコンセプトです。
まず感染症対策の点で言うと、換気のしやすさと、お客さん同士がきちんと距離を取れる設計になっているかを重視しました。作品を縦ラインで配置することや、作品の間に余白を設けるため、パーテーション使用枚数の制限をかけずに一人当たりの空間をたっぷり取ることなどがそれに当たります。結果的に、このような会場設計によってお客さんも作品を見やすい環境が作れたのではないかと思います。」

「例年は入り口に向かって水平に壁が立っていたんです。壁がこちら向きに並んでいるような設計をしていたので、見通しが悪く、閉塞感が強かった。今年は縦ラインを意識することで見通しがよく、さらに導線の設計もシンプルにすることができたと思います。」

  • 会場レイアウト図面
  • 会場写真1
  • 会場写真2
  • 会場写真3
  • 会場写真4
  • 会場レイアウト図面
  • 会場写真1
  • 会場写真2
  • 会場写真3
  • 会場写真4

「『ひらけた』という点について言うと、会場内に各カテゴリの説明パネルを設けたこともその一環でした。
今年、委員内で大切にしていたポイントのひとつに「内輪にならない」というものがありました。そのためには、わたしたちが普段なにげなく使っている言葉をそのまま適用することは不親切ではないかと思ったんです。たとえば『アートディレクション』と『グラフィックデザイン』は、多摩美の学生の間では異なるニュアンスをもつ言葉として扱われているのですが、じゃあ何が違うのか、と言われると非常に説明しづらい。そうした自分たちの間で不文律として共通されている認識と、外部からのお客さんが抱いている認識とのギャップについて、きちんと考えるべきだと思っていました。最終的には、このカテゴリについてわたしたちはこのような解釈をしています、という説明を添えることにしました。」

説明文の写真

主に映像展示を担当した映像班にも伺います。アニメーション作品などを扱う映像展示はメインの展示とは別フロアでの開催になりました。また、今回は時間制限を設けたこともあって、来場者の方が必ずしもすべての作品を見られるわけではありませんでした。例年と比較して、やりづらいこともあったのではないかと思うのですが。

「フロアの誘導については例年悩まされている問題で、今年も難しかったですね。会場特有の問題なので、もう少しSNSでのプロモーションなどで周知をはかったほうが良かったかもしれないと思います。
今年は時間制限があること、そして全作品を見ることができないという理由から、作品の紹介冊子を独自に制作しました。映像はどうしても時間を費やさないと鑑賞できないので、そのような手段でいくらか補うことができたことは良かったと思っています。
感染症対策についても、新たに考えなくてはいけませんでした。上映会場の途中入場の是非であるとか、席をひとつずつ空けることであるとか、ひとつひとつ対策班と検討を行い、対策を徹底しました。」

映像展示1
映像展示2

今年はオンラインでのチケット販売もおこないました。

「例年、入場者数をカウントしていないという衝撃の事実が判明し、適切なキャパシティがわからない状態から考えはじめなくてはいけなかったことが大きな難関でした笑 
今年は計896人の方にご来場いただきました。この人数設定は恵比寿ガーデンプレイスの方と話し合って決定した会場内に入れることができる人数の上限から、スタッフ分を引いた数になっています。
2度に分けてチケット販売を行いましたが、それでも予約することができない人が多数出てしまったことは申し訳なく感じています。ご来場いただいた方は本当にありがとうございました。」
「人が適度に少なく、展示が見やすかった、というご意見もいただきました。会場レイアウトの方法しかり、感染症対策でいろいろな点に余裕を持たせたことが結果的に見やすさに繋がった、ということもあるようです。もちろん、より多くの人に来ていただきたいという気持ちもあるのですが……運営側としては難しいところですね。」

今年は最悪の場合、会場で開催できないかもしれない、という危機感が常にありました。その前提の上で図録やWeb展示なども、会場展示ができなかった場合のバックアップとして動いていた部分があります。コロナ禍のなか、あえて実会場で展示をすること、その意味はどんなところにあったと感じますか。

「まず、自分たちが多摩美術大学のグラフィックデザイン学科の学生である、という点は大きいと思います。基本的にはなにか物質的なメディアに定着する、ということを基本として4年間学んできた。オンライン展示という形式ももちろんあり得ると思いますが、成果物が物質的なものであるかぎり、やはり十分に伝わらないことも多いですよね。
今年はコロナ禍だから手で触れない方がいいとか、オンラインで代替できるとか、そういうことを妥協として受け入れることには抵抗がありました。それは、コロナ禍「でも」開催する、ということに意味を感じていたと言えるかもしれません。他の大学の卒制展が自粛を余儀なくされたり、中止されたりしているということを耳にはしつつ、このような状況下でも何かを作っていくことを諦めないというか。実際会場展示には、人数制限はありましたが、多くの方に来ていただくことができました。
質問からは少し逸れますが、昨年、卒制展を開催できなかった先輩の引き継ぎや積み重ねがあったからこそ、今年の卒制展に繋がったと感じていて、とても感謝しています。その意味でも、今年は会場で開催できてよかったと思いますね。」

横断幕
集合写真



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©多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業制作展2021