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【メイキングインタビュー-第四弾 DM・会場パンフレット編-】

メイキングインタビュー第一弾に引き続き、DMやパンフレットの制作などに携わった、7名のデザイン班班員にインタビューしました。
制作の過程を振り返ります。

前回、メイン・ビジュアル編でインタビューしたデザイン班は、会場で配布していたパンフレット、そしてDMの制作も担当していました。今回はその制作についてお話を伺いたいと思います。
今年の会場パンフレットは円形でした。あの形は初期段階から決まっていたように思うのですが。

篠原紙工さんで年賀状を見せていただいたのですが、それがきっかけだったように思います。丸い紙が正方形で折れているという仕様の年賀状でした。」

「結構ぬるっと決まりましたね。気づいたら、という感じでした。
結果論ですが、丸にしたことで、全体の中でポスターだけが孤立しない形になったようにも思います。あのパンフレットがあることで、丸という形もこの展示の中で一つのアイデンティティになったような。」

「会場で開いてくれている姿がよかったですね。」

  • パンフレット1
  • パンフレット2
  • パンフレット3
  • パンフレット1
  • パンフレット2
  • パンフレット3

「折ってある紙を開いたら円形なのは面白いですよね。折り方もかなり検討していただきました。
機械折りなのですが、こんなの見たことない、普通やらないと担当者の方がおっしゃっていました。このためだけに機械の調整もしてくださって。畳んだとき、縦横が合うように穴の位置も調整していただいたんです。角がある四角形の紙なら調整も効きやすいそうなのですが、丸だと直径がずれやすいそうで。厚紙で型を作って、そこに穴あけ用の金型を合わせるような。その作業が大変そうでしたね。」

「折っている間に円形の紙が回転してしまうので、1つ1つ微妙に違うんですよね。」

「途中までは並べたら丸になるし、折り方も単純だということで、ピザ型の折り方を検討していました。でも、単体で見たとき、急に鋭利な形が出てきてしまって唐突な印象がありました。パンフレットはDMやポスターなど、全部制作したあとからの作業だったので、全体の雰囲気を壊さないように留意しました。」

「情報のレイアウトに関しても、穴を開けるので、数字がその穴に被らないよう微調整するのが大変でした。丸にした以上、中身の見やすさはちゃんと担保されていないとよくないと思ったんです。
ただ、最初は自分で会場マップを見ても、方向や順路がわからなかった笑 それをわかりやすくすることが悩んだポイントですね。」

「コストについて言えば、型が流用できたことが良かったですね。ポスターと全く同じ型を使用しているので、パンフレット用の型を新たに作る必要がなかったんです。」

パンフレット4
パンフレット5

話が前後してしまうようですが、今年のDM、ポスター、パンフレット、図録には、どれもメイン・ビジュアルの太陽の形の穴があいていますよね。なにか意図はあるんでしょうか?

前回のインタビューでも少しお話ししたかと思いますが、今年のメイン・ビジュアルは「ほのかに向こう側に見える希望、明日」というようなイメージで制作しました。穴をあけたのは、その「向こう側」を少しだけ覗き見るような、よりポジティブな要素を盛り込みたかったからです。
物理的な穴を開けることによって、手に取った人が穴を覗き込むなどのリアクションが期待できるとも思いました。ただビジュアルを目で受け止めるのではなく、なんらかの積極的な関与を生み出したかったんです。」

「最初はDMだけ穴をあけよう、という話になっていたのですが、途中でDMだけだとあまり広く行き渡らなそうだ、ということに気づきました。パンフレットやポスターにも穴をあけることによって、できるだけ穴の空いているものに接してもらう機会を増やしたかったんです。」

「穴あけについては、技術的にも手間がかかっています。
自分たちでレーザーカッターを使って作った試作品を篠原さんにお見せしたときは、前例がなかったため「これかあ……」という反応でした。どこまでクオリティを追求するかによって選択肢が変わる、と教えていただきました。たとえば台紙に合紙を使うか、それとも薄い紙を使うかなどによってです。
とにかく物質感のあるものを作りたい、ということがテーマとしてあったのですが、わたしたちの求める仕様が実現できるように、篠原さんが知りうる色々な技術を持っている会社に相談してくださいました。最終的には岩井金型さんという会社に金型の制作をご依頼したのですが、もしどこを当たってもダメだった場合の妥協案も提案してくださっていました。
自分たちではふんわりとしか考えられなかったところを技術的な側面から詰めてくださって、やり取りの中で制作がぐっと現実味のあるものに近づいていった感じがします。」

「今回いろんなものに穴をあけましたが、ものによって金属加工と、レーザー加工とを使い分けています。金属加工とレーザー加工ではプロセスや手法が全然違うので、DMと図録については、金属加工用にロゴをかなり調整しました。というのも、上から金型を紙に押し付けて、圧力で紙を抜いていく方法をとると、紙にかかる圧力にムラができてしまい、型が歪んでしまいがちなんです。強度を保てる形にするために。ロゴのエッジの角度を微調整して見ていただいたり、職人さんと直接やり取りしてデータを作り直しました。
作り直した金属加工用のデータは以前より角が丸くなっています。これはデータなのでこのサイズで見ることができますが、実際は肉眼じゃわからないくらいの差なんです。何ピコだったかな……聞いたことのない単位の世界でした。金属加工においては大きな違いになるそうです。」

金属加工1
金属加工2

「金型は中心を軸にして、回転させて作るということをお聞きしたので、データもその方法に即して制作しました。
データ上では一見大差ないところが、製品の仕上がりになると大きな違いになるというのも新鮮な経験でした。今までの学校の制作では、作ったデータを印刷しておしまい…ということばかりでしたが、アウトプットまでのプロセスが違うとこんなにも都合が違うんだ、と驚きましたし、やってみないとわからないようなことだったので、面白かったです。」

金属加工1
金属加工2

この穴のアイデアにしても、デザイン班の中では、DMの制作が全体のデザインを考えていく上での大きなきっかけになったと聞いていました。

「そもそもDMのほうがポスターなどの制作物より納期が早かったので、そちらから作ろう、ということになったんです。
それまではメインビジュアルの方向性もあまり決まっていなかったのですが、篠原紙工さんで色々な加工についてのアイデアを見せていただき、非常に触発されました。その帰りのファミレスで「こういうことしたら面白いんじゃない」という案がどんどん出てきました。」

「その話し合いがDMのデザインの発端で、あのときの勢いはすごかったです。私は参加できなかったんですが、話合いが終わったあと、グループLINEが目まぐるしく稼働していて。みんな盛り上がっていました。その熱量に乗っかった笑。DMのアイデアの出現でエンジンがかかりましたね。」

「これがDMの一番最初のスケッチです。
最初は完全にくり抜かない案で考えていましたが、そのうち穴だけでいいんじゃない?という話になって。穴から外の景色が覗けるような感じがすごく面白くて、これにしよう!となりました。
こんなふうにDMがいいノリで、スムーズに決まってしまったので、ポスターはどうしようという話になりました。「穴」というアイデアが強烈だっただけに、これまで考えていた方向性と折り合いをつけるのが難しかったんです。」

DMスケッチ

以前、図録編のインタビューをした時に、メンバーから同じような話を聞きました。デザイン班の方向性が急に変わったので、どうすれば良いのかわからなくなったと。笑

「そのあたりは、テーマの解釈として無理がない共通点を見つけ出し、そこだけは外さないようにしながら整合性を取っていったと思います。伏線回収のような。自分たちが想像しなかったところに繋がっていったような感じです。」

「実際、穴を現物で見た時、ほとんど満場一致で「良い」という反応が返ってきましたよね。明らかにそれまでの反応と違っていて。」

DMにはデボス加工も使われていますね。

「デボスにしたかったのは、穴を主役にしたかったからです。
文字を印刷すると、どうしてもそっちに目がいってしまう。デボス加工は色を使わないけれど、ちゃんと読めるので、理想通りの手法でした。」

「DMを作る工程で、岩井金型さんの穴あけが一番のチャレンジでした。デボス加工は篠原さんもやったことがあったのでスケジュールも取りやすかったのですが、岩井金型さんの穴あけがどのくらいかかるのか、そもそも可能なのか、全く読めなかった。そういう点もスケジュールや予算含め、リアルタイムで色々なところと繋がりながら篠原さんが考えてくださっていました。」

「結果的にですが、今回のDMは遠方で会場に来られない方からも「DM欲しいけど何とかいただけないですか」という問い合わせをいただきました。スマートフォン上の画像ではなくて、実物を「欲しい」と思わせるようなものができた、ということは嬉しいですね。」

実際制作が終わってみて、率直な感想を聞かせてください。

「すごくお金がかかっているので、失敗したらどうしよう、とは常々思っていました。だから、当日入場してくる人が自分たちの作ったものを持って会場を歩いている姿を見てちょっと泣きそうになりました笑」

「DMは、学生だけの力では絶対できなかった。それは具体的な加工のことだけではありません。職人さんや人との繋がりの中から触発されて生まれてくるアイデアによって完成したデザインだと思います。
世の中にあるものも、なんとなく受け取っているものでも、その裏側にはいろんな人のこだわり、技術、協力があり、その積み重ねでできているということを実感したし、考えるきっかけになりました。」

「篠原さんが『こんなに好き勝手できるのは学生だからだよ』とおっしゃっていました。実際の仕事ではこんなに加工したり、お金をかけたりできない。自由にやらせてもらって楽しかったです。」

「本当に良かったです。コロナ禍だからこそできたビジュアルだと思うし。」

「そういうものを作れたということが面白いよね。」

DMスケッチ



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©多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業制作展2021