title
main

【メイキングインタビュー第二弾 -図録編-】

展覧会図録の作成に携わった、図録班、写真班の7名にインタビューをしました。
図録作成の経緯や、掲載写真についてのエピソードを振り返ります。

今回は、展覧会図録の制作を手掛けた図録班にお話を聞きたいと思います。ではまず、今年の図録がどのような経緯で制作されたのか教えてもらえますか。

「経緯と言えるかどうかはわかりませんが、今年はコロナ禍の影響で、実会場への入場者数を制限しなくてはならない、という前提条件がありました。さらに緊急事態宣言がいつ発令されるかもわからない状況の中で、展示会場に来られない人が例年と比べて圧倒的に多くなるだろう、ということを踏まえる必要がありました。 そうしたときに、図録は後日、展示を振り返る際……つまり、アーカイブという面からたいへん重要な存在になってくると考えました。そのためにどんなことができるのか……デザイン面も重要ですが、中身の充実という点も大きな課題でした。」

  • 図録画像1
  • 図録画像2
  • 図録画像3
  • 図録画像1
  • 図録画像2
  • 図録画像3

「デザイン作業については、とにかくメインビジュアル完成まで具体的に考えられないということで、書店に行って色々な本の製本を見たり、会議でメイン・ビジュアルについて断片的に出たテーマなどについて話し合っていたり……引き出しを増やすような作業をしていました。
その甲斐もあってか、メインビジュアルが決まったあとは、メンバー全員ですぐに方向性の統一がはかれたんです。割とすんなり完成形のイメージが決まりました。」

実際にデザイン班がメイン・ビジュアルを完成させたのは、秋ごろでしたよね。
今年の図録は、まさに篠原紙工さんにご協力いただいた、特徴的な仕様が印象的です。バリバリと剥がす包装紙だったり、表紙に空いた太陽の形の穴であったり、ノドの部分のグラデーションであったり。こうしたデザインは、どのようなイメージで制作されたのでしょう。

「言語化するのは難しいのですが、いずれも班員の中で共有されていた、メインビジュアルに対するイメージや雰囲気に着想を得ています。
まず袋について。わたしたちは明日への希望を表現した今回のメイン・ビジュアルのコンセプトに共感をおぼえていたので、ただうすぼんやりと希望が見える……ということの先を図録で表現できればいいのではないかと思いました。そこで、半透明の袋に包まれた図録を、手に取った人がそれぞれ破って手にし、読むというストーリーを考えたんです。そうすることで、希望の光を自ら掴み取るようなイメージを形にできればと思いました。 ノドのグラデーションでは、太陽の光・温度感を表現したいと思いました。太陽の形も同じような理由ですね。実は表紙はDMで使用したのと同じ型を用いて加工しているんです。」

「袋はみんなで装丁を作る時に出てきた案で、会議の際にデザイン班から提案があった、ボケの表現を意識して出てきたものでした。
最初はVHSビデオなんかによく使われる、半透明のプラスチック・スリーブを使おうという意見がありましたよね。製本もコデックス装を想定していました。いずれも予算の問題から没になったんですが……でも、だったら紙で包んでもいいんじゃない?という話になり、現状打破という意味を込めて破いて開けるのはどうだろう、と。」

  • 袋詰め様子
  • 袋詰め様子
  • 袋
  • 袋詰め様子
  • 袋詰め様子
  • 袋

この袋は、恵比寿ガーデンプレイスの舞台裏で、図録班総出で包装していましたよね。誰も手作業で包んでいるとは思っていないと思うんですが。笑

「それで言うと、実は表紙の厚紙もすべて手作業で貼っているんです。篠原紙工の職人さんによるお仕事です。驚きました。」

制作の舞台裏についてもう少し聞かせてください。図録班は基本的に、作品ページ、インタビューページ……など、メンバー内でセクションをきっちり分けて作業していたような印象があります。具体的にどのように配分されていましたか。

「装丁・レイアウト・作品ページ・写真管理のようなすごくざっくりした感じで分けていました。ただ、就活や卒制も大変な時期ではあったので、役割は分けつつ、結局は動ける人が動くという形にならざるを得ませんでしたね。」

それぞれに軸足はありつつも、お互いに越境しあってチェックをおこなっていたということですね。


その中でも、今日は作品写真や、インデックスに掲載するポートレートの制作に携わった写真班のメンバーにも来ていただいているので、お話を聞いてみたいと思います。
特にインデックスのページは、全体的にぼかしが入ったような写真表現が特徴的です。どのような経緯でこうした表現に至ったのでしょうか?

  • 写真班:インデックスの写真
  • インデックス
  • 写真班:インデックスの写真
  • インデックス

「写真班も、デザイン班が出してくれたビジュアルに沿う形でこの案を出しました。例年、顔写真はメイン・ビジュアルのカラーをそのまま背景色にするパターンが多かったのですが、今年はコンセプトからメイン・ビジュアルに沿ったものにしたいという思いがありました。」
「完成図はクールですが、実際の撮影はすごくアナログでした。」

ぜひ、スタジオ撮影のテクニックを聞かせてください。

「梨地のビニールシートを使用して撮影しました。本来、農業用に使うようなビニールシートなのですが、透かしてみるとふしぎなボケ感が得られるんです。」
梨地(タフニール)購入サイト

「ここにいたるまで、オーガンジーとかビニール袋、クリアファイル、クロマティコとか、いろいろな素材を試しましたが、どれもいまいちで……
梨地を見つけてからは、すりガラスか梨地かの二択になったのですが、予算的、衛生的な理由から梨地を使用することに決めました。その後、細かく厚みもテストしつつ、最良の結果に落とし込んでいった形です。」

  • 試し1
  • 試し2
  • 試し3
  • 試し4
  • 試し1
  • 試し2
  • 試し3
  • 試し4

※画像、順にカーボグラスフィルター、不織布、ポリ袋、トレーシングペーパー

「完成したポートレートを一見するとそうは見えないかもしれませんが、ここまで1箇所にピントを合わせるためには、かなり梨地と接近しないといけないんです。そして被写体の側からはカメラが見えない笑
被写体の方たちにはとても苦労をかけた撮影だったと思います。」

「撮り終わるまでわからない面白さもありましたね。でも、個人的には、あの写真撮影はすごく楽しかったです。あんな撮られ方したことないし。」

「試行錯誤もかなりしましたね。スケジュールの許す限り何度も試し撮りしていました。」

  • 撮影セット
  • 撮影風景
  • 背景違い3
  • 撮影セット
  • 撮影風景
  • 背景違い3

「顔写真は、あまり鮮明に写りたくないという参加者も少なからずいると思いますが、この撮影方法では個人の意見を柔軟に汲み取れたことがよかったと思います。
しかも、消極的にではなく、積極的にぼかしを使えたのがいいですよね。顔を見せたくない、という意思は感じない写真にできたというか。」

最終的に図録に掲載された写真を見て、制作者としてはいかがでしたか?。

「正直めちゃくちゃ感動しました。ある時期からデザイン班がメイン・ビジュアルについての話し合いの中で「積極性」ということを重視するようになったんです。それに比べて、写真班のビジュアルは少し積極性に欠けると思っていた時期もありました。でも、みんな楽しんで写ってくれたので、一気にポジティブなビジュアルになったんじゃないかと思います。」

「撮影当日は比較的シャイな人たちも積極的に撮影に協力してくれて、新しい意味ができた、と思いました。」

「実は会場設営以前の段階で、卒業制作委員以外の参加者が、卒制展に参加していると感じられる機会ってほぼないんですよね。卒制委員で何をやっているか、作っているのかということはとかくブラックボックス化しがちでした。そんな中、写真撮影は全員を卒制展の気分に巻き込むことができるいい機会だったと思います。 ディズニーのキャストのように明るい雰囲気で撮影しました。」

  • 撮影風景2
  • レイアウト
  • 撮影風景2
  • レイアウト




話は図録制作のほうに戻りますが、冒頭に仰っていた、「中身の充実」という点について詳しく聞かせてください。

「最初から、数年後読んでもしっかり理解できるものを作りたいという話をしていました。
最初は教授に優秀作品のようにコメントをもらいたいという意見も出ていたのですが、全員は厳しいという意見をいただいて見送りました。
最終的にはグラフィックデザイン学科の4年間のカリキュラム説明を載せるという形に落ち着きました。」

カリキュラムページ

「もっといろいろな案が出ていたんですよ。教授の卒業制作を載せるとか。迷走していましたね笑
そのとき、あらためて委員立ち上げの時に話し合った図録の意味を見直し、10年後、20年後に人が見た時にもう少し資料性、読み物として価値があるものはなんだろうと考えました。
例年度の図録を開くと、すぐに作品ページが出てきて、その卒業作品に至った経緯、4年間どのような授業を受けたのか、どういったカリキュラムを経てこの作品を制作したのか……そういうことがわからなかったんです。
これでは、多摩グラについてある程度、同時代的に知識がある人でないと、何のことなのかわからないと思いました。カリキュラム説明を冒頭に入れたのはそういう理由からです。
しかし、これを入稿した後に研究室の方から聞いてないよ...と言われてしまってものすごく焦ったり。トラブル続きでした!」

「巻末の教授インタビューに関しては、図録班ではなく幹部にお任せしてしまったのですが、完成した原稿を見たら面白かったです。図録に載っているインタビューなのに大貫先生が「図録なんてやめちまえ」とおっしゃっていたり。」

「このインタビューではグラフィックデザイン学科の准教授3名(加藤勝也、佐賀一郎、平野篤史)、教授・名誉教授3名(大貫卓也、川口清勝、山形季央)の2組にお話を伺いました。コロナ禍にあって、世代も出自もそれぞれ異なる先生方に、これを機会にお話を伺えたことは、何よりぼくたちにとって非常に得がたい機会になりました。
ぜひ後輩にも読んでもらいたいなと思う内容になったと思います。来年の4年生なんかは特に。」

インタビューページ

「そうですね。来年の図録がどうなるのか今から気になります。そもそもなくなる可能性だってありますしね。今年は完全に卒制委員は有志で募りましたが、来年度がどうなるのかも分からないですし。」

「ぼくたちには、1代上の先輩が卒制展を開催することができなかった、ということへの意識が強くあったと思います。そもそも、今年もできるのか?という状態からスタートした。だから、むしろ図録を作る意味とか、展示をやる意味について、もう一度ゼロから考えることができたような気がします。」

「毎年なんとなく開催して形骸化していた部分を考え直すきっかけにもなりましたね。」

では最後に、今年の図録に関しての見所や、制作してみての感想を聞かせてください。

「今年の図録は、今までの反省を存分に活かせたものになったと思います。製本であったり、カリキュラム説明の追加であったり。コロナ禍の問題でスタートが遅くなってしまったりもしましたが、それも含めてよいきっかけになったように思います。」

「グループワークをしたことがすごく新鮮でした。メイン・ビジュアルが完成したあと、図録をどのように作っていこうかを考えたとき、班内でコンセプトをがっちり固める経験を出来たことが良かったと思います。
制作中は決まった案をめぐって他班と意見が食い違うこともあったのですが、そういう時も、こちらの意見を自信を持ってプレゼンテーションすることができました。納得いくまで班内で話し合えたことが良かったですね。」

「写真班としては、インデックスの必要性から考え始めたり、顔写真を撮る意味から考えられたことが良かったと思います。学生たちの写真を作品と一緒に載せたときに、内輪で盛り上がっている人たちを外部から見るような感じにならないように、できるだけ客観的な写真になるように考えたことがよかったことだと思いますし、見所だと思います。」

「わたしにとっては全てが見所です笑 完成した図録を見た時に、どこを見ても愛着が湧いてしまって。
思い出深いのはやはり包装ですね。袋はギリギリで決まったので、実は最後の最後まで全体のビジュアルがどうなるのか、正直確信がもてませんでした。早く包装を破って中から図録を出したい、と思わせるような程よい不完全さを想像していたので、会場の図録販売所でも目に見えるところに並べたくなかったんです。ゴミが並んでいると思われたら嫌だなと思って。笑
でも、実物を見た時に、予想以上に気持ちのいい、一定のクオリティを感じました。とても安心しましたね。
おそらく、みんなあの包装をすべて手作業でやっているとは思わないでしょう。早く破り捨てて!と言いつつ、自分もまだ破いていません笑 ぜひこれを読んだ人で、まだ破っていない人は、手元の図録を思い切って破ってほしいなと思います。絶対に気持ちいいと思うので。」

「単純に、卒制展や図録というものはこんなにも時間がかかるものなんだなと思いました。
こうした状況の中で、絶対に成功する卒制展ではないと思っているからこそ、個人で深く考えられたことがあるのではないかと思います。このような状況でも良いものは作れるという希望になってほしいと感じました。」

「わたしは唯一、図録班と写真班を兼任させていただいたので色々な思いがありますが、インデックスの写真もコンセプトを含めて検討することができたのはとても良かったと思います。
先ほどはお話しませんでしたが、作品写真についても綺麗に撮れたと思っています。影の付け方も作品ページの中で統一感がもたせられるようレタッチを行ったり。図録の作品写真はベース中のベースだと思うのですが、違和感なく見られる写真に仕上がったのではないかと思っています。
あとは、スタジオ自体が使えたのは本当によかった。コロナ禍で学校の施設も使用が制限されていたので。」

「インデックスのページはやはり、見ていても楽しいし、被写体になった学生たちも喜んでくれたりしたのはとても良かったと思っています。作品撮影もバタバタでしたが、本人より写真班の方がこだわってしまったり。笑 でも、そうした結果よい図録になったと思います。」

使用紙、書体
表紙…エアラススーパーホワイト、ボード81イエロー#120
見返し…NTラシャ ひまわり
本文…b7トラネクスト、b7バルキー
パッケージ…アートドリープ紫雲
書体…A-OTF中ゴシックBBBPr6N、Trade Gothic Next LT Pro、Helvetica Neue


4月3日(土)12:00(正午)より、図録のWEB販売を開始いたします。
図録販売サイトはこちら

←インタビュー第一弾
インタビュー第三弾→

©多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業制作展2021