title
main

【メイキングインタビュー第一弾 ─メイン・ビジュアル編─】

展覧会のメイン・ビジュアル作成に携わった、7名のデザイン班員にインタビューをしました。
展覧会を印象付けるアイコン、メイン・ビジュアル決定の経緯を振り返ります。

今日は卒制展のメイン・ビジュアルについて、制作してくれたデザイン班にお話を聞きたいと思います。早速ですが、今年のビジュアルのコンセプトを教えてもらえますか。

「今回のビジュアルの裏テーマは『太陽』です。太陽というモチーフが表す希望や未来のイメージ、そして、太陽が昇り、明日が来るということ。また、太陽は直接、目で見ることはできないし手には触れられないものだけれども、常に私たちと共にあるものでもありますよね。閉塞感のある今の日常にあって、わたしたちにとってなるべく普遍的で、共感を得られるようなテーマとして選びました。わたしたち自身も作っていて負担に思うことなく進められたような気がしますね。」

完成ビジュアル

「SNSでメイン・ビジュアルの反応を見ていて面白かったのは、あの太陽のマークを『ノコギリみたい』って言ってくれた人がいたこと。僕たち自身、テーマは『太陽』ですと言いつつ、見立てによっていろいろな解釈が導かれるように機能しているのはすごくいいことだと思います。」

「そうした解釈の広さについては、制作の序盤から意識して制作しました。 この卒展は自由参加の有志展という形式で、言ってしまえばかなりそれぞれバラバラな集団だから、強く一元的な意味や性格に回収されないものにすることが重要だと思っていたんです。結果的にそういうビジュアルになってるとすれば、とても嬉しいです。」

「あの丸いポスターはバッジのようでもあって、SNSで見たときもポップでかわいい感じになったと思います。」
「テーマも大事だけれど、そういう丸の形とか、物理的な定着面で言えば、篠原紙工さんにご協力いただいたことが大きかったですね。 ポスターやDMがああいう形や仕様になったのは、完全に篠原さんにお話を聞いたことがきっかけです。」


経緯を端から見ていた身としては、DMやポスターも含め、篠原紙工さんに打ち合わせに行ってから、出てくる案もかなり幅が広がって、一気に具体的になった気がします。つまり、具体的な定着のしかたについて考える幅が広がった、ということなんでしょうか。

「そうですね。篠原さんには『こういう加工がある』ということを色々教えていただいたのですが、特にDMはまさにそれをうかがって刺激を受けて、打ち合わせの帰りに寄ったファミレスでほとんど決定しました。そういう点では実物を見ることの重要さを感じたし、なかなかない経験だから面白かったな。」

「今回のDMで言えばエンボス加工や合紙をしていたり……物質としての面白さやクオリティがちゃんと担保されているものにしたいと思っていました。」

では、これから過去の案に遡って、どのように現在の案にたどり着いたかを見ていきたいと思います。

「これが一番最初の案です。何も決まってない状態。今見ると、最初はお祭り騒ぎ系が多かったのかもしれないですね。ギザギザとか……。最初は『爆発』とかがキーワードとして出ていました。あとは展開のことを考えて『積み木』とか。この段階では無理に方向性を絞らずに、みんなの考え方を広げて自由にしゃべっていました。」

  • 一番最初の案01
  • 一番最初の案02
  • 一番最初の案03
  • 一番最初の案04
  • 一番最初の案05
  • 一番最初の案01
  • 一番最初の案02
  • 一番最初の案03
  • 一番最初の案04
  • 一番最初の案05

この時点では、本当にブレスト的に考えている感じですね。どのあたりから今の方向性にまとまりだしましたか。

「かなり根底のコンセプトに関して言うと、ある時『シンボリック』というワードが出たことが、1つきっかけになったと言えるかもしれないですね。それから1週間後にまたアイデアを共有したら、同じような雰囲気のものが増えていた。メインビジュアルはポスターだけではなくて展開性も込みで考えなくてはいけなかったから、そのあたりのやりやすさも勘案していたように思います。」

「より具体的に『太陽』というモチーフについては……これは9月中旬くらいに制作した案ですが、この時にはじめて『太陽』が登場しています。

太陽の案01
太陽の案02
太陽の案03

この段階では最終案とはまったく別物ですが、全体で会議をした時に、『太陽』というモチーフへのみんなの食いつきがよかったことがヒントになりました。その後、参加者の1人が『太陽』についてすごく印象的な感想を言ってくれたことでデザイン班全体でかなり納得して進められるようになったと思います。 さっきも言っていたことだけど、ビジュアルが参加者の方向性や性格までを大きく規定するようなものになってはいけない。そういう前提に立ったとき、太陽っていうモチーフはそれだけで漠然とおめでたい感じがするからいいんじゃないか、というような話になったんだと思います。」

「たしか、コロナとコロナ(太陽)がかかっているとかいう意見も出ていた。笑」

ラフ01
ラフ02


「印刷や手法それ自体がテーマになるようなものができないか、というアイデアもありました。たとえばかなり終盤まで悩んだのは、写真でやるのかグラフィックでやるのか、という表現手法の選択です。 最初に出た太陽の案のベースが写真だったから、写真表現のほうもかなり模索していたんです。」

ラフ03

この時、表現として『ぼかし』を入れたい、ということをデザイン班で言っていたように記憶しています。完成案にも『ぼかし』は反映されていますよね。 こうした、ぼやけているようなイメージはどういうきっかけで出てきたんですか?

「コンセプト的には、さっきも言っていたように『形を強く決めない』ということが大事だと思っているから、ということになりますね。パスで描いたカッチリしたかたちだとそのイメージにそぐわないかな、と思ったんです。 今思えば、最終的に採用したこのつぶつぶしたボケ足の処理は、1番最初の案の雰囲気に影響を受けていたのかもしれないですね。」

「コロナ禍でよく見かけるようになった、飛沫を防御するビニール・シートも着想源のひとつだったと思います。ビニールシート越しに見ると、すこし像がぼやけますよね。『確かにその向こうにある光』というようなイメージを雰囲気として共有していたので、その表現としてはうってつけなのではないかと。」

「そういうわけで、写真という表現方法は、『ぼかし』という要素を魅力的に感じていたから捨てがたかったんです。」

ぼかし表現

「この頃になると〆切のプレッシャーもあって、この黄色い丸に違和感を覚えている人もいたんだけども……むしろ写真表現推しで進めていましたね。」

「後には引けない感じでした……。この時はずっと雨で、写真も全然撮れなかったり。」

「今思うと2017年の卒業制作展のビジュアル……グラフィックを写真で撮っているような表現に引っ張られていたかもしれないですね。それが最初、写真に着目した理由のひとつだったと思います。」

写真の案

「ここから今の太陽のかたちが登場します。このあたりの経緯が少しわかりづらいんですが、この太陽はメインビジュアルを作る過程で生まれたものではなくて、裏で進行していたDMを作る過程で発生したものなんです。DMのほうが先にアイデアがまとまっていたので、そちらからインスパイアされるかたちでメインビジュアルもこれでいこう、ということになりました。 それから、しばらく『太陽』と『穴』──DMはこの太陽のかたちの穴が空いているんですが──というテーマのあいだで迷走していたんだけれど、最終的に両者の優先順位とか、バランスを調整して落ち着いた感じですね。」

「今見ると、当時作っていたものはかなり要素がてんこ盛りになっていたと思います。完成したものは見た目もそうですが、意味や内容もシンプルになっている。」

「最終的な詰めの作業は7人でやっていると決まらないから、班で役割を分けて少人数でやりました。ここで文字組とかが決定していったかたちになります。メインの欧文書体、Trade Gothic Nextを決めたのもこの頃です。」

「細かいこだわりだけれど、このぼかしもPhotoshopのガウスぼかしをそのまま使うのは嫌だったから、少し工夫しました。」

文字組1 文字組2

これはもうほぼ完成形ですね。

「せっかくの丸だし、最初は完全に天地を無くそうとしたんですが、さすがにこの案だと見づらすぎたので、『多少の天地はある』という落とし所になりました笑」

「ほかにも、文字組を渦巻きにしたら面白いんじゃないか……とか、いろいろ試しましたね。最終的には割とカッチリした感じに落ち着いたなと思っています。」

「ここまでの間に太陽のかたちもたくさん試しました。ちょっとふっくらさせたり。最初は適当な形だったんですが、最終的にはグリッドを使って精密に形を作りましたね。 そうやって出たいくつかの中でいいものを選びました。」



グリッド案

「このくらいまで決まってからは班全体で作業しましたね。」

そこまで見ていなかった班の人は完成物を見てどう思いましたか?

「すごく定着してる、と思いました笑」
「最終的な案が一番太陽らしい感じになったように思います。 結果的にこのビジュアルは展開しやすくて、その後WEBだとか、ほかの紙ものを作った時にも助かりました。」

デザイン班にとって、この完成したビジュアルは納得感がありますか。

「そうだな、このビジュアルはみんなでちゃんと意見を出し合ってできたもの、という感じはします。だから、色んなところにしっかり根拠があるし、信頼できるものだと思いますね。」

「でも正直、自分が心の底からパーフェクトに納得できているのかと言われたらわからない。笑 でも、自分にとってはそういうことも含めて面白いビジュアルになったと思えているかもしれない。言葉にするのが難しいけど……。笑」

「個人的には、周囲からの反応……あのポスター欲しいというような声を耳にして嬉しく思っています。DMにせよ、ポスターにせよ、会場で配布するパンフレットにせよ、リアクションは知りたいですね!どう思って見てくれるのか。話にも出ていたけど、紙ものは物質としても面白いものになっていると思うから、ぜひ手にとって見てほしいと思います。」

→インタビュー第二弾

©多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業制作展2021